参考文献:
Hürzeler MB, Zuhr O, Schupbach P, Rebele SF, Emmanouilidis N, Fickl S.
The socket‑shield technique: a proof‑of‑principle report.
J Clin Periodontol. 2010 Sep;37(9):855–862.
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なぜ抜歯すると歯ぐきがやせてしまうのか?
歯を抜くと、歯を支えていた骨(歯槽骨)はその役割を終えるため、自然と吸収されてしまいます。とくに前歯のように薄い骨で構成される部分では、数ヶ月で大きくへこんでしまうこともあります。これは、インプラント治療を行う際に、見た目にも大きな影響を及ぼします。
「インプラントを入れたはずなのに、なんだか不自然」
「歯ぐきがへこんで笑ったときに影ができる」
このような審美的な問題の大きな原因は、抜歯後の骨の吸収と歯ぐきの退縮なのです。
Hürzelerらが示した「ソケットシールドテクニック(SST)」とは
2010年、Hürzelerらは画期的な手法を提唱しました。それがSST(Socket Shield Technique)です。
このテクニックでは、抜歯の際に歯の外側の歯根(頬側ルート)を意図的に残すことで、その部分の骨や歯ぐきの吸収を抑えるというアプローチです。残された歯根が、外側の骨や軟組織を支え続ける「盾(シールド)」となることで、見た目の自然さを維持する効果が期待されます。
Hürzelerらの研究では、SSTを応用したケースにおいて、骨の保存状態や歯肉の厚みが非常に良好であることが報告されました。さらには、インプラントと残した歯根が調和的に共存することが顕微鏡レベルで確認され、「インプラント=人工物」という印象を打ち消すほど自然な仕上がりが可能となったのです。
松本デンタルオフィス東京でのSSTの実践と工夫
当院では、見た目や機能に妥協のないインプラント治療を追求する中で、SSTを適応可能な症例には積極的に活用しています。ただし、SSTはすべてのケースに適しているわけではありません。次のような条件を満たすことが前提となります。
- ・頬側の歯根が割れていないこと
- ・炎症や感染が起きていないこと
- ・適切な診断と精密な形成技術を行えること
そのため、当院では以下のような取り組みを通じて、SSTの安全性と長期予後を確保しています。
- CTによる三次元的診断で歯根と骨の状態を詳細に評価
- マイクロスコープ下での繊細な歯根形成
- シールドとインプラント体の距離・位置関係を科学的に設計
- 歯科技工士との連携による審美的な補綴物設計
また、患者さんの安心のため、処置中は静脈内鎮静法を導入し、痛みや不安を最小限に抑えた環境を整えています。
SSTは「歯ぐきを残す」時代のインプラントへ
SSTの本質は、インプラント治療において「削る・抜く」から「残す・活かす」へと発想を転換することです。
従来は「抜歯後に骨がやせるのは当たり前」「歯ぐきが下がるのは仕方ない」とされていた場面でも、SSTという手法によって、天然歯の持つ支持機能を最大限活かすことが可能になりました。
その結果、「まるで自分の歯のよう」と感じられる自然な口元を再現することができます。
まとめ
ソケットシールドテクニックは、まだ比較的新しい手法であり、術者の技術や症例の見極めが非常に重要です。しかし、正しく行えば、前歯などの見た目が重要な部位において圧倒的な審美的メリットをもたらします。
松本デンタルオフィス東京では、エビデンスに基づいた最新の治療技術と、患者様一人ひとりに寄り添う治療方針を大切に、SSTを含むさまざまな高度治療を実践しています。
前歯のインプラントに不安を感じている方、歯ぐきの形まで自然に仕上げたいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
『 東京審美インプラント治療ガイド 』
監修:松本デンタルオフィス東京
所在地:東京都東大和市清原4丁目10−27 M‐ONEビル 2F
電話:042-569-8127
*監修者
医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス
院長 松本圭史
*経歴
2005年 日本大学歯学部卒業。2005年 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 入局。
2006年 日本大学歯学部大学院 入学。2010年 同上 卒業。
2010年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 助教
2013年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 専修医
2016年 医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス 新規開院
*所属学会
・日本補綴歯科学会
・日本口腔インプラント学会
・日本歯科審美学会
・日本顎咬合学会
*スタディグループ
・5-D Japan
・Esthetic Explores
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