今回ご紹介する論文は、2013年にHürzelerらによって発表された「The Socket-Shield Technique: First Histological Evaluation」です。この研究は、ソケットシールドテクニック(SST)における初の組織学的評価を行ったものであり、インプラント治療における新しい可能性を示しています。
論文タイトル:
The Socket‑Shield Technique: First Histological, Clinical, and Volumetrical Observations after Separation of the Buccal Tooth Segment – A Pilot Study
著者:
Bäumer D, Zuhr O, Rebele S, Schneider D, Schupbach P, Hürzeler MB
掲載誌:
Clinical Implant Dentistry and Related Research. 2015 Feb;17(1):71–82.
Epub 2013 Apr 30.
PubMed ID / DOI:
PMID: 23631704 / DOI: 10.1111/cid.12076
SSTの組織学的な裏付け
この論文では、抜歯時に唇側の歯根片を意図的に残すSSTが、唇側歯槽骨の保存に与える影響を組織学的に評価しています。犬の下顎を対象とした動物実験により、シールドと呼ばれる残存歯根の周囲には、骨の吸収が起こらず、セメント質、歯根膜、骨が良好に保存されていることが示されました。
当院での治療活用のポイント
当院では、審美性と長期的な骨の安定性を重視するインプラント治療において、このSSTを適応できる症例には積極的に導入しています。特に、前歯部のような審美的要求が高い部位において、歯肉の退縮を防ぎ、自然な見た目を維持する点において、この技術は大きな効果を発揮します。
インプラント周囲の組織保存とSSTの利点
- ・唇側歯槽骨の吸収を抑制
- ・歯肉の退縮リスクを軽減
- ・天然歯のような審美性の回復が可能
また、Hürzelerらの研究では、シールドとインプラントの間に結合組織が形成されることも確認されており、感染リスクの抑制にも一定の効果が期待できます。
術式への正確な理解と経験が重要
ただし、SSTは高度な技術と正確な診断を必要とするため、すべての症例に適応できるわけではありません。当院では、CT解析を含めた精密な診査診断を行い、安全性と予知性を担保したうえで術式の選定を行っています。
まとめ
Hürzelerらによる今回の組織学的評価により、SSTが単なる術式上の工夫にとどまらず、確かな科学的根拠に裏付けられた技術であることが明らかになりました。当院では、こうした最新の研究知見をもとに、患者さん一人ひとりの口腔内状況とご希望に合わせた最適な治療を提供してまいります。
インプラント治療で審美性と長期安定性の両立をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
『 東京審美インプラント治療ガイド 』
監修:松本デンタルオフィス東京
所在地:東京都東大和市清原4丁目10−27 M‐ONEビル 2F
電話:042-569-8127
*監修者
医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス
院長 松本圭史
*経歴
2005年 日本大学歯学部卒業。2005年 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 入局。
2006年 日本大学歯学部大学院 入学。2010年 同上 卒業。
2010年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 助教
2013年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 専修医
2016年 医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス 新規開院
*所属学会
・日本補綴歯科学会
・日本口腔インプラント学会
・日本歯科審美学会
・日本顎咬合学会
*スタディグループ
・5-D Japan
・Esthetic Explores
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