論文の概要:何を明らかにしたのか?
今回ご紹介するのは、「ソケットシールドテクニックの応用による歯間乳頭(パピラ)の保存」をテーマとした臨床報告です。
歯を抜くと周囲の骨や歯ぐきが痩せ、特に前歯部では自然な形が失われやすいことが知られています。通常、抜歯後には約3.8mmの幅の骨が減少し、6か月以内に高さも1mm以上下がると報告されています。こうした変化は見た目の美しさに大きな影響を与えます。
この論文では、2本の前歯を同時に抜歯し即時インプラントを行う際に、歯の一部(根の断片)を意図的に残すという工夫を取り入れました。その結果、11か月の経過観察で、歯と歯の間にある自然な三角形の歯ぐき(パピラ)が失われずに維持できたと報告されています。
要点をまとめると:
- 目的:抜歯後の骨と歯ぐきの形を守り、自然な見た目を再現すること
- 方法:根の一部を残したままインプラントを即時埋入し、仮歯で歯ぐきを支える
- 結果:インプラント周囲の骨と歯ぐきが安定し、審美性が良好に維持された
- 意義:従来リスクの高い「2本隣接するインプラント部位」でのパピラ保存に可能性を示した
参考文献情報
- 論文タイトル:Papilla preservation between two implants: a modified socket-shield technique to maintain the scalloped anatomy? A case report
- 著者:Fabrice Cherel, DDS, MS / Daniel Etienne, DDS, MS
- 掲載誌:Quintessence International. 2014 Jan;45(1):23–30
- PubMed ID / DOI:PMID: 24392492 / DOI: 10.3290/j.qi.a30765
- リンク:PubMedで論文を確認
当院での治療応用 ― 見た目の美しさを守るために
松本デンタルオフィス東京では、この研究の知見を応用し、特に審美性が重視される前歯部インプラントにおいて、歯ぐきの自然な形をできるだけ保つ治療を行っています。
応用されているポイント
根の一部を利用する考え方
歯をすべて抜いてしまうと骨が大きく痩せるため、条件が整う場合は歯の根の一部を保存し、骨や歯ぐきの支えとして活かします。
即時インプラントと仮歯の工夫
抜歯と同時にインプラントを埋入し、さらに仮歯を装着することで、歯ぐきが下がらないよう形を維持します。仮歯の裏側の形を工夫し、余計な圧力がかからないよう設計するのも大切なポイントです。
骨補填材や結合組織移植との併用
必要に応じて人工骨や歯ぐきの移植を組み合わせ、より安定した長期的な結果につなげています。
患者様にとってのメリット
- 自然な見た目が保たれる:前歯のインプラントでも「歯と歯の間が黒い三角形になる」リスクを抑えられます。
- 治療回数やダウンタイムの軽減:抜歯からインプラント埋入、仮歯装着までを一度に行うため、手術回数を減らせる可能性があります。
- 骨や歯ぐきの安定性向上:将来にわたってインプラント周囲の組織が健康に保たれることが期待されます。
患者様へのメッセージ
「インプラントはしっかり噛めるようになる」だけでなく、見た目の美しさや自然さも大切にする時代になっています。今回ご紹介した方法は、まだすべての症例で適用できるわけではありませんが、当院では学術的根拠に基づき、患者様一人ひとりの状態を丁寧に診査し、最適な方法をご提案しています。
「前歯のインプラントで自然な見た目が保てるか不安…」という方も、ぜひ一度ご相談ください。
『 東京審美インプラント治療ガイド 』
監修:松本デンタルオフィス東京
所在地:東京都東大和市清原4丁目10−27 M‐ONEビル 2F
電話:042-569-8127
*監修者
医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス
院長 松本圭史
*経歴
2005年 日本大学歯学部卒業。2005年 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 入局。
2006年 日本大学歯学部大学院 入学。2010年 同上 卒業。
2010年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 助教
2013年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 専修医
2016年 医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス 新規開院
*所属学会
・日本補綴歯科学会
・日本口腔インプラント学会
・日本歯科審美学会
・日本顎咬合学会
*スタディグループ
・5-D Japan
・Esthetic Explores
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