論文の概要:何を明らかにしたのか?
今回取り上げる論文は、「改良型ソケットシールドテクニックによる顎堤保存」**をテーマとしたケースシリーズです。
通常、歯を抜くと周囲の骨(特に外側の薄い部分=頬側骨)が吸収され、横幅で最大50%、高さで2〜4mm程度減るといわれています。この骨吸収はインプラント治療の難しさや見た目の問題につながります。
本論文では、抜歯後すぐにインプラントを入れず、まず根の一部(頬側の断片)を残して骨を守り、6か月後にインプラントを埋入する方法を報告しました。3症例で検証され、再開窓(リエントリー)時の観察で、頬側の骨がよく保存されていたことが示されています。
要点を整理すると:
目的:抜歯後の顎堤(歯槽堤)吸収を抑える
方法:頬側の根片を残し、コラーゲン材で保護。インプラントは6か月後に埋入
結果:全例で頬側骨が保存され、インプラントの埋入環境が良好に維持された
意義:即時埋入ではなく「遅延埋入」と組み合わせることで、感染リスクを抑えつつ骨保存を実現できる可能性を示した
参考文献情報
- 論文タイトル:Ridge Preservation with Modified “Socket-Shield” Technique: A Methodological Case Series
- 著者:Markus Glocker / Thomas Attin / Patrick R. Schmidlin
- 掲載誌:Dentistry Journal. 2014; 2(1):11–21
- PubMed ID / DOI:PubMed未収載 / DOI: 10.3390/dj2010011
- リンク: MDPIで全文を読む
当院での治療応用 ― 骨を守り、将来の選択肢を広げる
松本デンタルオフィス東京でも、この「改良型ソケットシールドテクニック」の考え方を取り入れています。特に前歯部など審美性が重視される部位では、骨のボリュームを守ることが自然な見た目と安定したインプラント治療につながるためです。
応用されているポイント
・即時埋入だけでなく遅延埋入の選択肢
感染のリスクが高い場合や骨の治癒を優先したい場合には、抜歯後に根片を利用して骨を温存し、数か月後にインプラントを計画的に行うことがあります。
・コラーゲン材などの併用
骨の保護や治癒の安定化を図るために、吸収性コラーゲン材や人工骨を適切に併用します。
・患者様一人ひとりに合わせた治療設計
喫煙習慣、歯ぐきの厚み、抜歯部位などによってリスクが異なるため、CTや精密診断を行った上で、この方法が適しているかを判断します。
患者様にとってのメリット
・将来のインプラントが有利に
骨が痩せにくくなるため、インプラントがしっかり支えられる土台を維持できます。
・審美性の向上
骨と歯ぐきの形が守られることで、自然な口元を再現しやすくなります。
・柔軟な治療計画
即時インプラントが難しい場合でも、骨保存により将来の治療選択肢を広げられます。
患者様へのメッセージ
インプラント治療では「すぐに入れること」だけが正解ではありません。まず骨や歯ぐきを守り、最適なタイミングでインプラントを行うという選択肢もあります。今回ご紹介した方法はまだ研究段階の要素も含まれますが、当院では最新の知見をもとに、患者様の状態に合わせた安全で信頼性の高い治療を心がけています。
「抜歯をした後、骨が痩せてしまうのでは…」と不安な方も、ぜひ一度ご相談ください。
『 東京審美インプラント治療ガイド 』
監修:松本デンタルオフィス東京
所在地:東京都東大和市清原4丁目10−27 M‐ONEビル 2F
電話:042-569-8127
*監修者
医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス
院長 松本圭史
*経歴
2005年 日本大学歯学部卒業。2005年 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 入局。
2006年 日本大学歯学部大学院 入学。2010年 同上 卒業。
2010年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 助教
2013年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 専修医
2016年 医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス 新規開院
*所属学会
・日本補綴歯科学会
・日本口腔インプラント学会
・日本歯科審美学会
・日本顎咬合学会
*スタディグループ
・5-D Japan
・Esthetic Explores
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