論文集

2025.11.20

【論文紹介】単独抜歯後の「骨の変化」とインプラント治療について ― Misawa らの研究をもとにした当院の考え方 ―

 

 

はじめに

前歯や小臼歯を抜いたあと、「そのままにしておくと骨が痩せてしまう」と耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。
実はこれは感覚的な話ではなく、CT(CBCT)を使った研究によって、どのくらい骨の高さや幅が減ってしまうのかが、数値としてはっきり示されています。

今回ご紹介する Misawa らの論文は、上顎の前歯・小臼歯部で単独抜歯を行ったあとの骨の変化を、
少なくとも1年以上経過したタイミングで詳細に調べた研究です。
当院が「抜歯後の放置リスク」や「骨造成・抜歯即時インプラント・ソケットシールドなどの必要性」をお話しする際の、重要な根拠のひとつになっています。

論文URL:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26566965/

 

 

論文の概要:何を調べた研究?

この研究では、上顎の前歯〜小臼歯部で片側は歯が残っている部位(歯のある側:T site)と、
反対側で同じ歯が抜けたままの部位(欠損側:E site)を、コーンビームCT(CBCT)で比較しています。

 

対象は 69名の患者さんで、それぞれの部位について

  • ・骨の断面積(どれだけ「面積」があるか)
  • ・骨の高さ
  • ・骨の幅(頬側〜口蓋側方向)

 

などを計測し、抜歯から1年以上経過した時点で、どのくらい骨が減っているかを調べています。

 

 

主な結果:1年経つとどれくらい骨が減るのか

論文の結果を、患者さんにもイメージしやすい形でまとめると、次のようになります。

 

  • 断面積(面積)の変化
    歯があった頃の骨の断面積は平均で約 99 mm² だったのに対し、
    抜歯して1年以上経つと、平均で 約65 mm² まで減少していました。
    ⇒ おおよそ 3分の1程度の骨量が失われている ことになります。

 

  • 高さの変化
    骨の高さは、平均 11.5 mm → 9.5 mm と、約 2 mm 低くなっていました。

 

  • 幅(横方向)の変化
    歯ぐきの縁から約3 mmの位置では、
    8.5 mm → 3.2 mm と、約6割以上の幅が失われている 結果でした。
    5 mm・7 mmと少し深い位置でも幅は減少しており、
    全体として「三角形に細くなったような骨の形」になることが示されています。

また、もともと頬側の骨は口蓋側に比べてかなり薄いことも確認されており、
抜歯後には特に頬側の骨が大きく痩せてしまう傾向があると報告されています。

 

 

この研究から分かること

Misawa らの研究から、次のような臨床的な示唆が得られます。

 

  • ・抜歯をして1年以上経過した部位では、骨の高さ・幅ともにかなり減少していることが多い
  • ・特に、歯ぐきの縁に近い部分(上から約3 mmあたり)での骨の横幅の減少が大きい
  • ・その結果、断面が細く尖った三角形のような形になり、

 

  • 十分な太さのインプラントを入れるには、そのままでは不足するケースが出てくる

つまり、「歯を抜いた後、しばらくそのままにしておくと骨が痩せる」という一般的な説明に、
具体的な数字と形態変化の裏付けを与えてくれた研究だと言えます。

 

 

当院での治療方針への活かし方

松本デンタルオフィス東京では、この論文を含む多くのエビデンスを参考にしながら、
インプラント治療や抜歯後の経過観察、骨造成の必要性を検討しています。

 

  • 抜歯後の放置リスクの説明
    「時間が経てば経つほど、骨は痩せてしまう」という傾向を、
    実際のCT画像とともに丁寧にお伝えし、
    抜歯後そのままにしておくことのメリット・デメリットを一緒に検討します。

 

  • インプラントのタイミングの検討
    即時埋入(抜歯と同時のインプラント)・早期埋入・十分に治癒してからの埋入など、
    どのタイミングでインプラントを行うかは、骨の状態と患者さんの背景を総合的に判断します。
    Misawa らのような研究結果は、「どの時期ならどの程度の骨量が期待できるか」を考える上で非常に参考になります。

 

  • 骨造成やソケットプリザベーションが必要かどうか
    抜歯後の骨の減少が大きいと予測されるケースでは、
    抜歯と同時に骨補填材を入れる「ソケットプリザベーション」や、
    後日の骨造成(GBR)を含めた治療計画を検討します。

 

すべての患者さんに同じ方法を行うわけではなく、
「現時点で残っている骨量」「将来どのような歯や噛み合わせを目指したいか」を踏まえて、
相談しながら方針を決めていくことを大切にしています。

 

 

患者さんへのメッセージ

歯を抜いたまましばらく放置してしまった場合でも、
CT撮影などで現在の骨の状態を確認し、
インプラントを含めた複数の選択肢から最適な治療計画を立てることは可能です。

一方で、この論文が示すように、
抜歯後の早い時期から「将来どのように歯を補うか」を一緒に考えることが、
骨量を温存し、治療の選択肢を広く保つうえでとても重要です。

松本デンタルオフィス東京では、
こうした研究データをふまえながら、
患者さん一人ひとりにとって無理のない、現実的な治療計画を提案できるよう心がけています。
「この状態でインプラントはできるのか」「骨が足りないと言われた」など、不安な点があればお気軽にご相談ください。

 

 

本当に後悔しないインプラント治療を東京で
東京審美インプラント治療ガイド
監修:松本デンタルオフィス東京 
所在地:東京都東大和市清原4丁目10−27 M‐ONEビル 2F

電話:042-569-8127

 

 *監修者
医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス
院長 松本圭史
*経歴
2005年 日本大学歯学部卒業。2005年 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 入局。
2006年 日本大学歯学部大学院 入学。2010年 同上 卒業。
2010年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 助教
2013年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 専修医
2016年 医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス 新規開院
*所属学会

日本補綴歯科学会
日本口腔インプラント学会
日本歯科審美学会
日本顎咬合学会
*スタディグループ
5-D Japan
Esthetic Explores

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