論文集

2026.02.03

【論文紹介】ソケットシールドは5年後どうなっている? ― 即時埋入における「審美性」と「安定性」を5年間追った報告(Bäumerら 2017)―

 

 

ソケットシールドは5年後どうなっている?
― 即時埋入における「審美性」と「安定性」を5年間追った報告(Bäumerら 2017)―

 

はじめに

前歯のインプラント治療で、患者様がいちばん気にされることの一つが「見た目」です。 歯を抜いた直後からインプラント治療を進められる“即時埋入”は治療期間の短縮につながる一方で、 抜歯に伴う骨や歯ぐきの変化(とくに頬側=前から見える側のボリューム減少)を完全に止めるのは簡単ではありません。

そこで注目されてきたのが、歯根の一部をあえて残すことで、歯根膜(PDL)やバンドルボーンを温存し、 頬側の組織変化を抑えることを狙う「ソケットシールドテクニック(Socket Shield Technique:SST)」です。

今回ご紹介する論文は、SSTを用いた即時埋入について、5年という中長期での 臨床所見・レントゲン所見・3Dによる体積変化(ボリューム変化)をまとめた報告です。

 

論文の紹介

Bäumer D, Zuhr O, Rebele S, Hürzeler M.
Socket Shield Technique for immediate implant placement – clinical, radiographic and volumetric data after 5 years.
Clinical Oral Implants Research. 2017;28:1450–1458. doi:10.1111/clr.13012

論文URL(PubMed):
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28333394/

出版社ページ(要旨):
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/clr.13012

 

この研究はどんな内容?(方法の概要)

この研究は、上顎の審美領域(犬歯〜小臼歯の範囲)でSSTを用いて即時埋入を行った 10名(連続症例)の後ろ向きケースシリーズです。

評価は、治療前(抜歯前)と、治療から5年後を比較し、

  • 歯ぐき・周囲組織の健康状態(プロービング、出血など)
  • レントゲンによる辺縁骨の変化
  • 模型を3Dスキャンして重ね合わせることで、頬側の輪郭(ボリューム)がどれだけ変化したか
  • 審美評価(ピンクエステティックスコア:PES)

をまとめています。

 

結果のポイント(患者様にとって重要な点)

1)5年後も、インプラントは全例で良好に経過

対象となった症例では、5年のフォロー期間で、重大な有害事象は報告されず、 臨床的にも健康な状態が維持されていました。

2)歯ぐきの“へこみ(ボリューム減少)”が小さかった

3Dによる体積評価では、頬側の輪郭変化が平均で小さい範囲に収まっており、 抜歯・即時埋入後の“つぶれ”を最小限に抑えられる可能性が示唆されています。

3)歯ぐきの下がり(退縮)は、隣の歯と同程度

インプラント部の歯ぐきの退縮量は、隣在歯の変化と大きくは変わらない傾向が示されました。 前歯の審美領域ではこの点が結果に直結するため、臨床的な示唆として重要です。

4)辺縁骨の変化は「生理的な範囲」のリモデリング

レントゲン所見では、インプラントショルダー周囲に生理的な骨のリモデリングが確認され、 全体として大きな骨吸収が問題になる所見は強調されていません。

5)審美評価(PES)は良好

独立評価によるピンクエステティックスコア(PES)でも、全体として良好な結果が示されています。

 

この論文が示している「大事な注意点」

この研究は、SSTの可能性を示す一方で、著者ら自身が 「日常的にルーチンで行う治療としては、まだ推奨できない」という慎重な結論を述べています。 理由は、ケースシリーズ(後ろ向き・少数例)という研究デザイン上、 より高いエビデンス(前向き試験、比較試験、より大きな症例数)が必要だからです。

つまり、SSTは「誰にでも適用できる万能な方法」というより、 条件が揃ったときに、適切な術式で、リスク管理のもとに検討される選択肢として位置づけるのが現実的です。

 

当院での活用(松本デンタルオフィス東京の考え方)

当院では、文献の知見を踏まえつつ、SSTを検討する場合でも「適応の見極め」を最優先にしています。 具体的には、以下を総合的に評価したうえで、他の選択肢(ソケットプリザベーション、GBR、軟組織マネジメント等)も含めて提案します。

  • CTでの骨形態評価:頬側骨の厚み、欠損形態、リスク部位の把握
  • 感染・炎症リスク:根尖病変、歯周状態、破折の有無など
  • 審美要求:笑った時に見える範囲、歯肉ライン、隣在歯との調和
  • 長期安定性:清掃性、咬合、メインテナンス体制

治療はあくまで「手段」であり、目的は患者様の口腔全体の健康と、長期的に安定した結果です。 SSTが適するケースもあれば、別の方法がより安全で予測性が高いケースもあります。 当院では、メリットだけでなく限界やリスクも含めて丁寧にご説明し、納得いただいたうえで治療計画を決定します。

 

まとめ

Bäumerら(2017)は、ソケットシールドを用いた即時埋入について、 5年という期間での臨床・レントゲン・3D体積評価を提示し、 頬側の輪郭変化が小さい可能性と、良好な審美結果を示した重要な報告です。

一方で、研究デザイン上の限界も明確であり、ルーチン適用にはさらなる検証が必要である点も同時に示されています。 当院では、文献的根拠と臨床的判断をすり合わせ、患者様ごとに最適な治療をご提案しています。

 

本当に後悔しないインプラント治療を東京で
東京審美インプラント治療ガイド
監修:松本デンタルオフィス東京 
所在地:東京都東大和市清原4丁目10−27 M‐ONEビル 2F

電話:042-569-8127

 

監修者
医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス
院長 松本圭史
■ 経歴
2005年 日本大学歯学部卒業。2005年 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 入局。
2006年 日本大学歯学部大学院 入学。2010年 同上 卒業。
2010年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 助教
2013年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 専修医
2016年 医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス 新規開院
■ 所属学会

日本補綴歯科学会
日本口腔インプラント学会
日本歯科審美学会
日本顎咬合学会
スタディグループ
5-D Japan
Esthetic Explores

詳しいプロフィールはこちらより

一番上に戻る
042-569-8127042-569-8127 24時間WEB予約24時間WEB予約 治療紹介治療紹介