
ソケットシールドは「期待」だけで選ばない。
― 現時点のエビデンスを整理したシステマティックレビュー(Gharpure & Bhatavadekar 2017)―
はじめに
前歯の抜歯後、インプラント治療で患者様が最も気にされるのは「見た目」と「長持ち」です。 特に抜歯直後からインプラントを行う“即時埋入”では、治療期間を短縮できる一方で、抜歯に伴う骨や歯ぐきの変化(とくに頬側=前から見える側のボリューム低下)が課題になります。
そこで近年、歯根の一部を意図的に残し、歯根膜(PDL)やバンドルボーンの温存を狙う ソケットシールドテクニック(Socket-Shield Technique:SST)が注目されてきました。
ただし、新しい治療ほど「良さそう」という印象が先行しやすいのも事実です。 今回ご紹介する論文は、SSTについて現時点(2017年4月まで)で入手可能な文献を体系的に整理し、 生物学的な妥当性や、臨床的な見通し(長期予後)を冷静に評価したシステマティックレビューです。
論文の紹介
Gharpure AS, Bhatavadekar NB.
Current Evidence on the Socket-Shield Technique: A Systematic Review.
Journal of Oral Implantology. 2017;43(5):395-403. doi:10.1563/aaid-joi-D-17-00118
論文URL(PubMed):
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28604262/
出版社ページ(全文PDF/HTMLが表示される場合があります):
https://joi.kglmeridian.com/downloadpdf/view/journals/orim/43/5/article-p395.xml
この研究はどんな内容?(方法の概要)
著者らは、PubMed-Medline、Embase、Web of Knowledge、Google Scholar、Cochrane Centralを用いて、1970年〜2017年4月までの文献を系統的に検索しています。
その結果、条件を満たして評価対象となったのは23研究で、内訳は以下でした。
- 臨床のケースコントロール研究:1件
- 動物の組織学研究:4件
- 臨床の抄録:1件
- 症例報告・症例シリーズ:多数(主に短期フォロー)
また、23研究のうち18研究はフォロー期間が12か月以内で、長期予後を判断するには情報が限られる点が強調されています。
結果のポイント(「良い面」だけでなく「リスク」も見える化)
1)研究の多くが“短期”で、質(デザイン)も偏りがある
SSTに関する報告は、当時の時点では症例報告が中心で、比較試験や長期の前向き研究が不足しているため、 「一般化(誰にでも当てはまる結論)」には慎重であるべき、という立場です。
2)合併症の内訳が具体的に示されている
本レビューでは、報告されている合併症・有害事象が整理されています。 特に多かったものとして、頬側/歯槽頂側の骨吸収が挙げられています。 臨床報告でも「骨吸収」「シールド露出(歯根片が出てくる)」「シールドの感染・破綻」などが一定数記録されています。
3)“生物学的な妥当性”も、十分とは言い切れない
動物研究では、インプラント表面にセメント質様組織やPDL様組織が形成された所見が報告される一方で、 骨吸収やオッセオインテグレーション不全など望ましくない所見も一定割合で見られています。 著者らは、当時の証拠だけでは生物学的妥当性を強く支持するには不十分、とまとめています。
4)結論:現時点では“長期成功を予測するのは難しい”
このレビューの結論は明確です。 「高品質なエビデンス(ランダム化比較試験、前向きコホートなど)が揃うまでは、 この術式の長期的な成功を確実に予測することは難しい」とされています。
当院での活用方針(松本デンタルオフィス東京の考え方)
当院では、SST(ソケットシールド)を“流行の術式”として扱うのではなく、 このようなレビューが示す限界やリスクも含めて踏まえた上で、治療計画を立てます。
- 適応の選別:CTで頬側骨の状態、歯根形態、破折・感染リスク(根尖病変/歯周病の活動性)を確認します。
- 代替案の提示:SSTが不向きな場合は、ソケットプリザベーション、GBR(骨造成)、軟組織マネジメントなど、より予測性の高い選択肢をご提案します。
- 説明の重視:メリットだけでなく、露出・感染・骨吸収など起こり得るリスク、追加処置の可能性を事前に共有します。
- メインテナンス前提:治療後の清掃性・咬合・定期検診まで含めて、長期安定を設計します。
インプラント治療は、あくまで「手段」です。 大切なのは、患者様のお口全体の健康を守り、見た目と機能を長期的に安定させること。 当院では、文献の知見と臨床経験を統合し、患者様ごとに無理のない選択肢を提案します。
まとめ
Gharpure & Bhatavadekar(2017)のシステマティックレビューは、 ソケットシールドテクニックに関する当時の文献を整理し、 「報告は増えている一方で、長期予後を裏付ける高品質なエビデンスはまだ不足している」 という現実を示した重要な論文です。
当院では、こうしたエビデンスを土台にしながら、 患者様の状態・希望・リスク許容度を丁寧にすり合わせ、最適な治療計画をご提案しています。
本当に後悔しないインプラント治療を東京で
東京審美インプラント治療ガイド
監修:松本デンタルオフィス東京
所在地:東京都東大和市清原4丁目10−27 M‐ONEビル 2F
電話:042-569-8127
■ 監修者
医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス
院長 松本圭史
■ 経歴
2005年 日本大学歯学部卒業。2005年 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 入局。
2006年 日本大学歯学部大学院 入学。2010年 同上 卒業。
2010年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 助教
2013年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 専修医
2016年 医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス 新規開院
■ 所属学会
・日本補綴歯科学会
・日本口腔インプラント学会
・日本歯科審美学会
・日本顎咬合学会
■ スタディグループ
・5-D Japan
・Esthetic Explores
詳しいプロフィールはこちらより


























