ソケットシールドの「形・厚み」で結果は変わる?― 周囲骨の厚みと残す歯根片の条件を検討した動物実験(Guiradoら 2016)―

 

はじめに

ソケットシールドテクニック(Socket-Shield Technique:SST)は、抜歯と同時にインプラントを埋入する際に、 頬側(表側)の歯根片を意図的に残し、歯根膜(PDL)やバンドルボーンを温存することで、 頬側骨・歯肉の形態維持を目指す治療概念です。

一方で臨床では、「歯根片をどの程度の厚みで残すべきか」「周囲骨の厚みがどれくらいあれば予測性が高まるのか」 といった条件設定が結果に大きく影響します。

今回ご紹介する Guirado ら(2016)の論文は、SSTの構成条件を変えた場合に、 周囲骨の保存や骨結合がどのように変化するかを動物実験で検討した研究です。

 

論文の紹介

Calvo-Guirado JL, Troiano M, López-López PJ, et al.
Different configuration of socket shield technique in peri-implant bone preservation: An experimental study in dog mandible.
Annals of Anatomy. 2016;208:109–115.

論文URL(PubMed):
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27565228/

 

研究の概要

本研究は、犬下顎にインプラントを埋入し、ソケットシールドの構成条件を変えた複数グループを比較したものです。 12週間後に、レントゲン評価および組織学的評価が行われました。

  • 残す歯根片の厚み
  • インプラント周囲骨の厚み

これらを組み合わせ、骨の保存状態や骨接触率(BIC)との関連が検討されています。

 

主な結果と示唆

1)歯根片とインプラントの間に新生骨が形成され得る

歯根片が歯根膜を介して頬側骨と生理的に結合している所見が確認され、 歯根片とインプラントの間にスペースがある部位では、インプラント表面に新生骨が形成されるケースが認められました。

 

2)周囲骨が厚いほど骨の安定性が高い傾向

インプラント周囲骨の厚みが約3mm以上ある条件では、 骨の吸収や移動が少なく、より安定した骨形態が得られる傾向が示されています。

 

3)歯根片は厚すぎても有利とは限らない

歯根片の厚みが2mmを超える条件では、骨リモデリングが大きくなる傾向がみられ、 「残し過ぎ」が必ずしも良好な結果につながらない可能性が示唆されています。

 

当院での活用方針

当院では、ソケットシールドや部分抜歯療法を検討する際に、

  • CTによる頬側骨の厚み評価
  • 歯根形態・破折線の確認
  • 感染や炎症リスクの除外
  • 最終補綴を見据えたポジショニング

を前提として、適応を厳密に判断しています。 条件が揃わない場合は、骨造成やソケットプリザベーションなど、 より安全性の高い方法をご提案します。

 

まとめ

Guiradoら(2016)の研究は、ソケットシールドテクニックにおいて 「残す歯根片の厚み」と「周囲骨の厚み」が結果に影響し得ることを示した、 臨床的にも示唆に富む報告です。

当院では、こうしたエビデンスを踏まえながら、 患者さん一人ひとりの条件に合わせて、長期的な安定性を重視した治療計画をご提案しています。