コラム

2025.07.28

歯周病や虫歯でボロボロの歯でもインプラントはできるの?

目次

1.「歯がボロボロでも、もう手遅れ?」と悩むあなたへ

・歯がグラグラ・欠けている…誰にも相談できない不安

長年の歯周病や虫歯によって、歯がグラグラしていたり、欠けたり折れたりして「もう歯医者に行ってもどうしようもないのでは…」と感じていませんか?実際、歯がボロボロの状態になってしまうと、恥ずかしさや不安から歯科医院への受診をためらう方も多くいらっしゃいます。

「今さら相談しても怒られるかも」「全部抜かれてしまうのでは」「治療費が高額になるかも」といった気持ちから、つい放置してしまいがちです。しかし、それこそが症状をさらに悪化させる大きな原因になってしまいます。

歯や歯ぐきがボロボロでも、まずは現状を正しく把握することが大切です。現代の歯科治療は、以前とは比べものにならないほど進歩しています。重度の歯周病や虫歯であっても、状態に応じた治療法があり、決して“手遅れ”ではありません。

・“ボロボロの歯=もう抜くしかない”は本当?

患者様からよく聞かれるのが、「こんなに歯が悪くなっていたら、全部抜かれますか?」という声です。しかし、すべてのケースで歯を抜く必要があるわけではありません。保存可能な歯は残す方向で検討されますし、たとえ一部の歯が抜歯対象となっても、残った健康な部分を活かして治療を組み立てることが可能です。

たとえば、虫歯でほとんど歯冠が崩壊していても、歯根が健全であれば土台として使えることもあります。歯周病で歯が動いている場合も、治療で炎症をおさえて、骨を再生する方法が適応されることもあります。

そのうえで、どうしても残せない歯については、インプラント治療という選択肢が有効になるケースがあります。インプラントは、抜歯後に顎の骨へ人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、人工歯を固定する治療です。天然歯に近い機能と見た目を取り戻せるのが特徴です。

・まずは、歯周病や虫歯の状態を正しく見極めることが大切

歯がボロボロになった背景は人によって異なります。歯周病が長期的に進行していた方もいれば、虫歯の再発を繰り返していたケース、あるいは外傷や噛み合わせの問題が原因になっている場合もあります。

そのため、まず必要なのは、レントゲンやCTによる精密な検査です。歯の根や顎の骨の状態、歯周組織の炎症の程度などを可視化し、どの歯を残せて、どの部分を補う必要があるのかを診断します。

そして、治療は単に「見た目をきれいにする」ことではなく、「しっかり噛める」「再発しない」状態に整えることが目標です。必要であれば、インプラント治療と歯周病治療を並行して行うことで、口腔内全体のバランスを回復することが可能になります。

「歯がボロボロだから、もうダメだ」とご自身で判断せず、一度専門の歯科医師に状態を見てもらうことをおすすめします。今ある不安や疑問に耳を傾けたうえで、患者様にとって無理のない治療計画を立てていくことができます。

「何もできないと思っていたのに、インプラントでまた噛めるようになった」「もっと早く相談していればよかった」という声は少なくありません。歯周病や虫歯で歯がボロボロでも、希望を捨てないでください。

2. 歯周病や虫歯があっても、すぐにインプラントできるの?

・インプラント前に必要な「口腔内の治療」とは

インプラントは、失った歯の機能と見た目を補う優れた治療法ですが、「すぐに手術できる」とは限りません。とくに歯周病や虫歯が進行している方の場合は、まず口腔内全体の健康状態を整える必要があります。

インプラント治療において最も大切なのは「インプラントを支える土台」がしっかりしていること。歯周病で炎症が広がっている状態のままインプラントを入れてしまうと、せっかく埋入したインプラントが早期に脱落してしまうリスクがあります。これは“インプラント周囲炎”と呼ばれる合併症で、天然歯の歯周病と似たような状態です。

そのため、まずは歯ぐきの炎症をしっかりと治療し、細菌のコントロールができるようになってから、インプラント治療へと進むことが原則となります。歯科医院によっては、歯周病専門医や歯科衛生士が連携し、インプラント前に徹底した口腔内管理を行う体制を整えているところもあります。

・歯周病の進行状態によって異なる対応方法

歯周病には軽度・中等度・重度といった段階があり、進行の程度によって対応が変わります。軽度であれば、歯石除去や歯面清掃(PMTC)を数回行った上で、比較的短期間でインプラント治療に入れるケースもあります。

一方、歯周ポケットが深く、歯槽骨の破壊が進んでいる重度の歯周病では、治療に数ヶ月以上かかることもあります。炎症を抑える内服薬、歯周外科手術、骨の再生療法(再生誘導法など)などを段階的に行い、しっかりと安定した状態にしてからインプラント治療の準備に入ります。

また、歯周病が顎骨を大きく吸収させている場合は、インプラントの埋入が難しくなることもあるため、「骨造成(こつぞうせい)」という再建処置が必要になる場合もあります。これにより、土台となる骨の厚みや高さを補い、インプラントを支える十分な条件を整えることができます。

・虫歯が多い方に必要な“治療優先”の理由

虫歯が原因で歯が大きく欠けたり、神経まで感染していたりする場合は、そのままインプラントを入れることはできません。口腔内に感染源がある状態で外科手術を行うと、傷口から細菌が侵入して炎症や腫れ、治癒の遅れを引き起こすリスクがあるからです。

そのため、まずは残せる歯は根管治療(歯の神経の治療)などを行い、状態を安定させることが優先されます。抜歯が必要な歯については、炎症が落ち着いてから、もしくは抜歯と同時にインプラント埋入する「抜歯即時埋入」が適応されることもあります。

さらに、虫歯が多発している方の中には、生活習慣やセルフケアの見直しも必要となるケースがあります。甘いものの摂り方、ブラッシングの方法、歯並びや噛み合わせなども総合的に見ていくことで、インプラント治療の成功率をより高めることができます。

インプラント治療は決して“単発の処置”ではありません。口腔内全体の環境を整え、長期的に健康な状態を維持するための“包括的な医療”として考えることが重要です。

「できるだけ早く歯を入れたい」という気持ちはよく理解できますが、インプラントを長持ちさせるためには、急がば回れの姿勢が大切です。炎症を放置して無理にインプラントを入れてしまうと、将来的に再治療が必要になり、かえって負担が大きくなるリスクもあるからです。

歯周病や虫歯がある方ほど、まずはしっかりと治療・管理を受けたうえでインプラントを選択することで、10年・20年と快適に使い続けられる可能性が高まります。すぐにインプラントに進めないからといって、失望する必要はありません。むしろそれは、未来への“確実な準備”なのです。

歯がボロボロでも、今からできることはあります。歯周病や虫歯があっても、適切な治療を受ければ、インプラントという選択肢は十分に可能です。焦らず、まずは今の状態を正しく診断してもらうことから始めましょう。

3.「骨がない」と言われたけど、本当に無理なの?

・骨が足りないと言われた方のための“骨造成”とは

インプラント治療を希望して歯科医院を受診した際、「顎の骨が足りないので難しいかもしれません」と言われたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際、歯周病や長期間の入れ歯使用によって、歯を支えていた骨(歯槽骨)は徐々に痩せていく傾向があります。

しかし、骨が足りない=インプラントはできないというわけではありません。近年では「骨造成(こつぞうせい)」と呼ばれる再建技術が発達しており、骨の厚みや高さが不足しているケースでも、インプラント治療を実現できる可能性が高まっています。

骨造成にはいくつかの方法があり、人工骨や自家骨(自分の骨)を使って骨を補い、インプラントをしっかりと支えられる状態にします。代表的な方法には、サイナスリフト(上顎洞底挙上術)、GBR(骨誘導再生)、ソケットリフトなどがあります。これらの手術は専門性が高く、設備や経験が整った歯科医院で行われることが一般的です。

・骨がやせた原因とインプラントの成功率の関係

骨が少なくなってしまう原因にはいくつかありますが、代表的なのが重度の歯周病です。歯周病は歯ぐきの炎症だけでなく、歯を支えている骨を徐々に破壊していく病気です。無症状で進行することが多いため、気づかないうちに骨が大きく減っていたというケースも少なくありません。

また、歯を失ってから長期間そのままにしていた場合も、骨は少しずつ吸収されていきます。入れ歯を長く使っている方の中には、噛む力が直接骨に伝わらないために、顎の骨が著しく痩せてしまっていることがあります。

こうした状態でも、適切な骨造成を行うことでインプラントの埋入成功率を十分に高めることが可能です。もちろん骨の状態や全身の健康状態によっては、治療の流れや期間が通常よりも長くなることもありますが、「骨がないから諦めましょう」と即断される時代ではありません。

・歯周病による骨吸収でも希望が持てるケースとは

特に重度の歯周病で骨が吸収されている方は、「もう何もできないのでは…」と感じてしまうこともあるかもしれません。しかし、実際には、歯周病治療と骨造成を組み合わせることで、インプラント治療が可能になるケースが増えています。

例えば、歯周病によって骨が失われた場所でも、感染源である歯を抜歯し、炎症をコントロールしたうえで、骨造成を行えば十分な骨量が回復することがあります。インプラントを埋入するまでに数ヶ月の治癒期間が必要になりますが、その分、しっかりとした土台が整います。

また、歯周病によって歯がボロボロになった方の場合、残せる歯と抜かなければならない歯を丁寧に見極め、インプラントと天然歯の共存を目指す治療計画を立てることも可能です。骨が少ないからといって、すべてを抜歯してフルインプラントにする必要はありません。

さらに近年では、デジタル技術による「サージカルガイド」を活用し、骨の少ない部位でも安全かつ正確にインプラントを埋入できる技術も進化しています。事前にCTデータをもとにシミュレーションを行うことで、リスクを最小限に抑えた手術が可能になっています。

骨の量がどの程度不足しているのか、どの部位にインプラントを入れたいのかによって、選択肢は大きく変わります。だからこそ、「骨がない」と言われた場合でも、すぐに諦めるのではなく、まずは専門的な診断を受けることが大切です。

CT撮影や模型分析などの精密検査によって、骨の厚み・高さ・密度がどの程度なのかが正確に把握できます。その上で、骨造成の必要性、方法、治療期間、費用などをしっかり説明してもらえる歯科医院を選ぶことが重要です。

「骨が少ない」という不安を抱えていた方が、適切な再建処置を受けることで、自信を取り戻し、食事や会話を楽しめるようになった例も多くあります。骨がない=不可能ではなく、ただ“手順が増えるだけ”というケースが大半です。

インプラントを希望されるすべての方に、安全かつ満足のいく治療が届けられるよう、まずは「現状を知ること」から始めてみませんか。

4. ボロボロの歯を抜いたあと、すぐにインプラントできる?

・抜歯後すぐにインプラントを入れる「抜歯即時埋入」とは

「歯がボロボロで、もう抜かないとダメ」と言われたとき、多くの方が気にするのが「抜いたあと、いつインプラントが入れられるのか?」という点です。とくに前歯など見た目に関わる場所では、早く治したいというご希望も多く寄せられます。

実は近年、抜歯したその日にインプラントを埋め込む「抜歯即時埋入(ばっしそくじまいにゅう)」という方法が普及しています。この手法は、歯を抜いた直後の穴(抜歯窩)にそのままインプラントを入れることで、治療期間の短縮や骨の吸収予防にもつながるという利点があります。

ただし、この方法が適応できるかどうかは、抜歯部位の状態に大きく左右されます。歯周病で炎症が強い、周囲の骨が大きく破壊されている、膿が溜まっているといった場合は、感染リスクを避けるために治癒期間を設けてからの埋入が安全とされます。

・状態によっては「治癒期間」が必要な理由

歯を抜いたあと、顎の骨や歯ぐきが自然に回復するまでには通常2〜3ヶ月ほどかかります。これは「抜歯後治癒期間」と呼ばれ、骨や軟組織が再生し、細菌の影響が落ち着くまでの大切なプロセスです。

とくに歯周病や虫歯が原因で歯を失った場合、抜歯部位には炎症や感染が残っていることが多く、すぐにインプラントを入れることで感染やインプラント周囲炎を引き起こすリスクが高くなります。

そのため、多くの症例では抜歯後しっかりと治癒期間を設け、その間に骨の量や質を確認しながら治療計画を進めていきます。必要であれば、骨造成や歯ぐきの再建も併せて行い、インプラントが長く安定するための土台作りを徹底します。

この段階でしっかりと準備を整えることで、術後の腫れや痛みを抑え、成功率の高いインプラント治療につながります。短期的なスピードよりも、長期的な安定と快適性を重視した判断が求められます。

・顎骨や歯肉の状態に応じた専門的判断がカギ

「抜いてすぐにインプラントを入れられるかどうか」は、CT画像や骨の状態を見ながら歯科医師が総合的に判断します。患者様ごとに骨の厚みや高さ、感染の有無、歯ぐきの質、噛み合わせの力のかかり方などが異なるため、マニュアル通りにはいかないのが現実です。

例えば、前歯部で抜歯即時埋入を行う場合には、見た目の自然さや歯ぐきのラインを美しく保つために「審美性の考慮」も必要となります。これには高い技術力が求められ、経験のある歯科医師の判断と対応力が大きな鍵を握ります。

一方、奥歯の場合は、しっかりと噛む力に耐えられる骨の確保が重要です。顎の骨がやせている方や、長年入れ歯だった方は、骨造成が先行することも多くあります。「すぐにできるかどうか」よりも、「安全にできる条件がそろっているか」が最優先です。

さらに、抜歯後に一時的な仮歯を装着することで、見た目や機能を保ちつつ治療期間を過ごすことも可能です。「歯がない期間ができるのが不安」という方も、安心して治療を受けられる選択肢があることを知っていただきたいと思います。

歯がボロボロになって抜歯が必要になったとしても、それは終わりではなく「新しい口元を取り戻すスタート地点」です。抜歯のあと、どんな治療を選び、どういった計画を立てるかによって、その後の口腔環境は大きく変わっていきます。

歯を失った部位をどう補うかは、患者様のライフスタイルやご希望、全身状態にも大きく関わる重要なテーマです。インプラント治療は、ただ歯を入れるだけではなく、噛む力・見た目・将来性を含めたトータルな選択肢として検討されるものです。

「抜歯したあと、どうすればいいのか不安」「すぐに歯を入れたいけれど大丈夫?」と迷われている方も、まずは一度、骨や歯ぐきの状態を丁寧に診断してもらうことが第一歩です。焦らず、一人ひとりに合ったタイミングと方法で、確かな治療を進めていきましょう。

5. 総入れ歯の人でも、インプラントはできるの?

・「すべての歯を失った方」向けのインプラント治療

「もう歯が一本も残っていないけれど、インプラントはできるの?」というご相談をよくいただきます。結論から言えば、総入れ歯の方でもインプラント治療は可能です。むしろ、入れ歯に悩みを抱えている方にこそ、インプラントは新しい選択肢となり得ます。

総入れ歯は、歯ぐきの上に乗せて使用するため、外れやすさや噛む力の弱さ、しゃべりづらさ、食事の制限など、日常生活に不便を感じることが少なくありません。一方、インプラントは顎の骨にしっかりと固定するため、入れ歯に比べて格段に安定し、しっかりと噛めるというメリットがあります。

歯がすべて失われた場合でも、すべての歯の本数分インプラントを入れる必要はありません。4〜6本のインプラントで上下の義歯を支える治療法が確立されており、治療の負担や費用も軽減できる設計が進化しています。

・4本で全体を支える「オールオン4」とは

総入れ歯の方に人気が高まっている治療法のひとつに、「オールオン4(All-on-4)」と呼ばれるインプラント治療があります。これは、片あごにわずか4本のインプラントを戦略的に埋め込み、それらで人工の歯を一体型で支えるという画期的な技術です。

オールオン4の最大の特徴は、骨の少ない部分を避けながらインプラントを斜めに埋めることで、広い範囲の人工歯を安定して支えることができる点です。骨造成を避けられるケースも多く、身体への負担が少ないのが利点です。

さらに、条件が整えば手術当日に仮歯まで装着することが可能です。そのため、「歯がない状態で過ごすのが不安」という方でも、見た目や食事に悩まされる時間を最小限に抑えることができます。

オールオン4は、通常のインプラントよりも手術時間が短く、通院回数が少ないことから、高齢の方にも選ばれやすい治療法です。ただし、適応には骨の状態や全身の健康状況の確認が欠かせません。

・総入れ歯の不満を解消したい方への希望

長年総入れ歯を使っていると、顎の骨が徐々に痩せてくることで入れ歯が合わなくなり、ズレたり外れたりすることが増えてきます。中には「食事が億劫になった」「笑うのが恥ずかしい」と、日常生活に大きなストレスを抱えている方も少なくありません。

インプラントは、顎の骨に直接固定されるため、噛む力は天然歯に近く、安定感も抜群です。これにより、硬いものや弾力のある食品でもしっかりと噛めるようになり、「食べる喜びが戻った」と感じる方が多くいらっしゃいます。

また、入れ歯特有の「外れそうで不安」「金具が見えて恥ずかしい」といった見た目の問題も、インプラントによって大きく改善されます。自然な口元に近づける審美的効果も、治療を選ぶ大きな動機になっています。

さらに、総入れ歯による咬合力の低下は、顎関節や姿勢、さらには消化機能にも影響を与えることがわかっています。しっかり噛める状態に回復することで、全身の健康維持にも好影響が期待できます。

総入れ歯の方にとって、インプラント治療の第一歩は「顎の骨がどれだけ残っているか」を知ることです。インプラントを支えるには一定の骨の厚みと高さが必要ですが、CT検査によってそれが可視化され、治療計画の立案に役立ちます。

骨が痩せている場合でも、骨造成によってインプラント治療が可能になるケースは多くあります。また、「オールオン4」のような骨を温存した治療法を選ぶことで、より負担の少ない治療を目指すこともできます。

「もう入れ歯で我慢するしかない」と思っていた方にこそ、インプラントは大きな可能性を秘めています。毎日の生活がより快適に、そして豊かになるよう、ぜひ一度専門医にご相談ください。

6. 歯がボロボロな人に多い“全身のリスク”にも配慮した治療

・糖尿病や高血圧などの持病がある場合の注意点

歯がボロボロになるまで放置してしまう背景には、全身疾患との関連があることも少なくありません。とくに糖尿病、高血圧、心疾患、腎疾患などの持病を抱えている方は、体調管理が優先されることで歯科受診が後回しになりがちです。しかし、これらの病気と口腔環境は深く関係しています。

例えば、糖尿病のある方は歯周病が進行しやすく、治りにくいことがわかっています。歯ぐきの炎症が慢性化しやすく、外科手術後の傷の治癒にも時間がかかる傾向があります。インプラント治療でも、血糖値のコントロール状態が良くない場合は、感染や合併症のリスクが高まるため、慎重な判断が求められます。

また、高血圧や心臓疾患がある方は、治療時のストレスや麻酔薬の影響が懸念されることもあるため、持病に合わせた安全な治療計画が必要です。医師の診断書が求められる場合もあり、医科と歯科の連携が非常に重要になります。

・血液サラサラの薬を飲んでいても大丈夫?

抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方も増えており、インプラント手術に支障がないか不安に思われる方も多いのではないでしょうか。代表的な薬にはワーファリン、バイアスピリン、プラビックスなどがあります。

これらの薬を服用している場合、外科手術時に出血が止まりにくいことがあるため、慎重な対応が求められます。しかし、だからといってインプラント治療が不可能というわけではありません。

近年は、薬を中止せずに行える低侵襲な手術法や、止血処置の工夫が確立されています。あらかじめ内科主治医と連携し、適切な情報共有を行うことで、安全に手術を進めることが可能です。

重要なのは、「薬を飲んでいるから無理」と自己判断せず、必ず服薬状況を歯科医師に正直に伝えること。情報が正確であれば、それに合わせた治療選択ができます。隠すことが一番のリスクになりかねません。

・医科連携がある歯科医院での安心感

持病がある方、長期間治療を受けていなかった方にとって、インプラント治療は決して「気軽な選択」ではないかもしれません。しかし、だからこそ医科との連携体制が整った歯科医院での治療は安心材料になります。

たとえば、糖尿病や心臓病のある方がインプラントを検討する際には、かかりつけ医との情報共有をもとに、全身状態を把握したうえで治療計画を立てます。必要があれば、血液検査や心電図の結果をもとに手術可否の判断や麻酔方法の選定を行います。

また、患者様のストレスや不安が大きい場合には、静脈内鎮静法(うたた寝麻酔)と呼ばれるリラックスできる麻酔を活用することで、心身の負担を最小限に抑えることも可能です。歯科恐怖症の方にも有効な手段として注目されています。

インプラント治療は、単に“歯を入れる”だけの医療ではありません。口腔と全身の健康をつなぐ総合的な治療であり、持病のある方にも配慮した設計が必要不可欠です。

これまで治療を諦めていた方も、「自分の状態でもできるのか」と迷っている方も、まずは一度、医科的配慮に長けた歯科医院でのカウンセリングを受けてみてください。条件が整えば、安全性と機能性を兼ね備えたインプラント治療が可能なケースは少なくありません。

7. インプラントは見た目も自然?「ボロボロから美しく」への変化

・セラミックによる自然な仕上がりとは

インプラントは「よく噛めるようになる」という機能面の回復だけでなく、見た目の美しさにも大きな特徴があります。とくに前歯など、人目につきやすい場所においては、見た目の自然さを重視される方も多いのではないでしょうか。

インプラントの上に取り付ける人工の歯(上部構造)には、セラミックという非常に審美性の高い素材が用いられることが一般的です。セラミックは光の透過性が天然歯に近く、色合いや質感がとても自然で、パッと見ただけでは本物の歯と見分けがつかないほどの仕上がりになります。

さらに、患者様ごとに色味や形をオーダーメイドで設計できるため、周囲の歯との調和も美しく整えられます。「一本だけ白すぎる」「目立ちすぎる」といった不自然さとは無縁の、美しい口元を実現できます。

・笑えなかった過去から、笑顔が戻る喜び

歯がボロボロになってしまった方の多くが、口元を隠して笑ったり、写真を避けたりするようになります。虫歯で黒ずんだ歯、欠けた歯、抜けたままの隙間……そうした状態がコンプレックスとなり、人との会話や外出まで億劫になる方も珍しくありません。

インプラント治療を受けた方のなかには、「自然な見た目に変わったことで、ようやく笑顔を取り戻せた」という声が多く寄せられます。セラミックの歯は黄ばみにくく、劣化もしにくいため、長期間にわたって美しさをキープできる点でも安心です。

また、以前の入れ歯で「金具が見えて気になっていた」「話すたびに外れそうで不安だった」という方も、インプラントに変えることで見た目のストレスから解放されています。人前で堂々と話せるようになった、メイクや髪型を楽しめるようになった、といった変化は、見た目の美しさ以上の価値を生み出します。

・噛めるだけでなく“口元の印象”まで変わる

インプラントは「歯の根っこ(人工歯根)」から再建する治療法のため、歯ぐきや顎の骨の形まで考慮して設計されます。これにより、単なる“歯の修復”を超えて、顔全体の印象にまで良い変化をもたらすことが可能になります。

例えば、総入れ歯や前歯が抜けたままの状態では、口元がすぼんで見えたり、唇のハリがなくなったりすることがあります。インプラントで正しい位置に歯を補うことで、口元にボリュームと立体感が戻り、フェイスラインが若々しく見えるようになります。

また、噛み合わせが整うことで顔の歪みや姿勢のバランスにも好影響を与えることが報告されています。「顔の左右差が気にならなくなった」「顎の痛みや肩こりが楽になった」といった声も、実際の臨床現場では多く聞かれます。

このように、インプラントは「歯が入る」だけで終わらず、見た目・機能・身体のバランスまで総合的に改善する可能性を秘めた治療法です。単に失った歯を補うだけでなく、自分らしい表情や生活を取り戻すきっかけになると言えるでしょう。

「もう年だし、見た目にはこだわらない」「とにかく噛めればいい」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、治療後に「もっと早くやればよかった」と感じる方の多くが、見た目の変化に驚き、喜びを感じているのが現実です。

口元の印象は、想像以上にその人の表情や雰囲気に影響します。笑顔が自然に出るようになる、会話に自信が持てる、人と積極的に関われる——それらの変化は、日常生活を明るく前向きに変えていきます。

インプラント治療は、「健康」と「美しさ」の両立を目指せる治療法です。歯がボロボロになってしまった方こそ、その変化の大きさを実感できる可能性があります。「見た目がきれいになるならうれしいかも」——そう思った瞬間が、治療の第一歩かもしれません。

8. インプラント治療の費用はどのくらいかかるの?

・保険適用外と自費診療の違い

インプラント治療を検討する中で、多くの方が最も気にされるのが「費用」です。一般的にインプラント治療は保険適用外、つまり自由診療となります。これは、機能性だけでなく審美性や耐久性を重視した治療であり、高度な技術や精密な機器、品質の高い素材を用いるためです。

一方、保険診療が適用される治療(例:入れ歯やブリッジ)では、治療の選択肢や素材に制限があり、「とりあえず噛めるようにする」ことが目的になります。対して、インプラントは「しっかり噛める・長く使える・見た目も自然に仕上がる」ことを追求するため、費用がかかるのは避けられません。

なお、事故や先天的な理由で歯を失った場合に限り、特殊な条件下で保険適用されるケースも存在しますが、一般的な虫歯や歯周病による欠損治療では自由診療が前提となります。

・インプラント治療の相場とその内訳

インプラント1本あたりの相場は、全国的には35万円〜50万円程度とされています。費用の内訳には以下のような要素が含まれます。

  • 診査・診断(CT撮影、模型作製、カウンセリング)
  • インプラント体(人工歯根)および手術費用
  • アバットメント(連結部品)と上部構造(被せ物)
  • 材料費(セラミックやジルコニアなど)
  • 骨造成や歯周治療などが必要な場合の追加費用

「1本いくら」と一言で言っても、その人の骨や歯ぐきの状態、治療計画の内容、選ぶ素材などによって費用は大きく変わります。たとえば、前歯のインプラントは見た目の美しさが重要になるため、審美性の高い素材や技工士による細かな調整が加わり、費用がやや高めになる傾向があります。

また、複数本を同時に治療する場合は、1本あたりの費用が抑えられるセットプランを設けている医院もあります。部分入れ歯との併用や、上下の咬み合わせを考慮した治療計画を立てることで、長期的な費用対効果を上げることも可能です。

・分割払いや医療費控除などの活用も

「一度に全額払えるか不安」という方でも、デンタルローン(分割払い)を用いることで無理のない支払いプランを選ぶことができます。月々1万円前後から始められる場合もあり、家計に大きな負担をかけずに治療を進められる選択肢が広がっています。

また、インプラント治療は医療費控除の対象です。1年間に支払った医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合、その一部を所得税から控除することができ、結果的に数万円〜十数万円の還付が受けられることもあります。

医療費控除を受けるには、治療にかかった費用の領収書や明細書をきちんと保管し、確定申告時に提出する必要があります。デンタルローンを利用した場合でも、実際に支払った金額が対象になりますので、事前に歯科医院で確認しておくと安心です。

たしかにインプラントは高額な治療です。しかし、それが10年・20年としっかり噛めて、自然な見た目を保ち続けられるのであれば、単なる“高い出費”ではなく“価値ある自己投資”とも言えます。

入れ歯のように数年ごとに作り直す必要が少なく、ブリッジのように周囲の健康な歯を削ることもありません。歯を1本失ったことが、他の歯や噛み合わせに影響を及ぼすリスクも考慮すると、長期的な視点で見た場合、結果的にインプラントの方が経済的だったというケースも多くあります。

また、よく噛めることで栄養がしっかり摂れたり、見た目に自信が持てたりと、生活の質(QOL)そのものが向上することも、インプラント治療の大きな魅力です。

費用の面で迷っている方は、まずは検査と相談から始めてみることをおすすめします。実際にかかる費用や、支払い方法を具体的に確認することで、不安が和らぐケースは多いです。費用だけにとらわれず、ご自身の将来にとって何が最良の選択かを一緒に考えていきましょう。

9. 重度の虫歯や歯周病による歯の崩壊、そのまま放置するとどうなる?

・放置による噛み合わせの悪化と全身の健康リスク

「もう歯がボロボロで…」と感じている方の中には、「でも今さら治しても…」「痛みがないからそのままでもいいかな」と放置してしまう方も少なくありません。しかし、虫歯や歯周病による歯の崩壊を放置することは、口の中だけでなく全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。

たとえば、虫歯が進行して歯が欠けたり折れたりしても、噛み合わせに大きな変化がなければそのまま過ごせてしまう場合があります。ですが、知らないうちに咬み合う力のバランスが崩れ、他の歯に負担が集中することで、次第に複数の歯が悪くなっていくという“連鎖反応”が起こりやすくなります。

また、噛み合わせが崩れることで顎関節症や首・肩のコリ、頭痛、姿勢の歪みなど、身体全体の不調に波及するケースもあります。歯の問題を甘く見ていると、将来的に治療の選択肢が減り、より大掛かりな治療が必要になることもあります。

・残せる歯を失う“連鎖反応”に要注意

虫歯や歯周病が原因で1本の歯がダメになった場合、そのまま放置すると周囲の歯が次々と巻き添えになる危険があります。これは「一口腔単位の崩壊」と呼ばれ、現場の歯科医師が最も懸念する現象のひとつです。

たとえば、奥歯を失った状態で放置すると、前歯にかかる負担が大きくなり、結果的に前歯までグラグラしてくるという事態が起こります。歯が抜けた隙間を他の歯が倒れ込むことで、歯列全体が乱れ、食べにくさや見た目の変化につながります。

また、歯周病によって支えを失った歯は、進行すれば自然脱落してしまうこともあり、それに気づかずにさらに放置すると、骨が吸収されてインプラントの適応が難しくなるケースもあります。つまり、「治せたはずの歯」を失い、「インプラントにできたはずの箇所」も手遅れになってしまう可能性があるのです。

・早期治療で将来の治療負担を軽減するには

口腔内のトラブルは、早期であればあるほど、治療の選択肢が広く、費用や身体的負担も軽く済むというのが大原則です。たとえば、小さな虫歯であれば1〜2回の治療で済むものが、放置することで神経を抜く必要が生じたり、最悪の場合は抜歯になることもあります。

また、歯周病は症状が出にくいため気づきにくいのですが、気づいたときには重度に進行していたということが非常に多くあります。その結果、インプラントや入れ歯など、人工的に補う治療を選ばざるを得なくなり、時間も費用もかさむケースが後を絶ちません。

一方で、早い段階で口腔内の状況を把握していれば、歯周病治療や咬合調整などで現状維持が可能になることもありますし、抜歯が避けられない場合でも、骨があるうちにインプラントを計画的に行うことで、よりスムーズな治療が可能になります。

歯がボロボロになるまで放置してしまうと、「どうせもうダメだ」「今さらどうにもならない」と諦めたくなる気持ちもわかります。ですが実際には、今残っている状態を正確に診断し、残せる部分を守りながら治療を進めることができます。

歯は1本だけの問題ではなく、口全体・身体全体につながっている組織です。「1本くらい大丈夫」「前歯じゃないから平気」という油断が、将来の生活の質に影響するリスクをはらんでいます。

インプラントを含めた高度治療も、早期の診断と準備があれば、選択肢が広がり、成功率も高まります。「見た目が気になる」「人前で話せない」「噛めない食べ物が増えた」と感じたときが、治療のタイミングです。

ボロボロになった歯は、“終わり”ではなく、“改善のスタート”です。どうか放置せず、未来の自分のために、一歩を踏み出していただきたいと思います。

10. 歯がボロボロな方こそ重要な「メンテナンスの考え方」

・インプラントを長く使うために必要なケアとは

インプラントは「一度入れれば一生もの」と思われがちですが、実際には適切なメンテナンスを行わなければ、インプラントもまた失われる可能性があります。天然歯と同様に、歯ぐきや顎の骨にトラブルが起きれば、インプラントがグラグラしてきたり、抜け落ちてしまうこともあるのです。

とくに、インプラント周囲炎と呼ばれるトラブルには要注意です。これは、インプラントの周囲に細菌が侵入し、歯周病のように骨が溶けてしまう疾患です。痛みなどの自覚症状が少ないため、気づいたときにはかなり進行していることもあります。

そのため、インプラント治療を受けた方は、必ず定期的なメンテナンスと検診を受ける必要があります。歯科医院でのプロフェッショナルケアによって、インプラントの状態や歯ぐきの健康を維持し、長く快適に使い続けることが可能になります。

・歯周病が再発しないようにするための予防習慣

歯がボロボロになる原因の多くは、歯周病と虫歯の長期的な放置です。せっかく治療で口の中を整えても、同じ生活習慣やブラッシング方法を続けていては、再び同じ問題を繰り返してしまうリスクがあります。

とくに歯周病は、再発率が高い慢性疾患のひとつです。完治というよりも「管理する」病気であり、定期的なクリーニング・プラークコントロール・セルフケアの徹底が重要になります。

自宅でのケアも非常に大切です。毎日の歯磨きはもちろん、歯間ブラシやフロス、洗口液なども取り入れて、歯と歯ぐきのすき間の汚れまでしっかり落とす習慣が必要です。また、喫煙は歯周病とインプラント周囲炎のリスクを高めるため、禁煙のご相談も併せて行われることがあります。

歯がボロボロになるまで我慢してきた方こそ、「今度こそ大事にしたい」という気持ちを持たれているのではないでしょうか。治療の終わり=予防のスタートととらえ、人生の後半に向けて健康な口腔環境を維持していきましょう。

・専門の歯科衛生士によるサポートの重要性

インプラントを含めた歯科治療の成功には、歯科医師だけでなく、歯科衛生士の存在も欠かせません。歯科衛生士は、専門的な知識と技術を持って、患者様の口腔ケアを中長期的に支える“パートナー”です。

たとえば、歯磨きのクセや磨き残しの場所を細かくチェックし、その人に合ったケア方法を指導してくれます。また、歯ぐきの状態を継続的にモニタリングし、異変があればすぐに医師へ報告・連携する体制が整っている医院も多くあります。

さらに、インプラント周囲のクリーニングは、天然歯とは異なるアプローチが必要です。専用の器具や低侵襲なクリーニング技術を使い、インプラントを傷つけずに汚れだけを除去する専門的なケアが求められます。こうしたメンテナンスは、患者様ご自身では行えない部分であり、プロによる定期管理が不可欠です。

インプラント治療を「入れたら終わり」とせず、「入れてからがスタート」と考えられるかどうかが、結果を大きく左右します。ボロボロだったお口を整えたあと、いかにそれを維持できるかが、今後の人生の快適さに直結すると言っても過言ではありません。

せっかく取り戻した健康と自信を、できる限り長く保っていただくために。予防とメンテナンスを習慣にすることが、何よりの「再治療予防」となるのです。

『 東京審美インプラント治療ガイド:監修 松本デンタルオフィス東京 』
監修:松本デンタルオフィス東京
所在地:東京都東大和市清原4丁目10−27 M‐ONEビル 2F

電話:042-569-8127

 

 *監修者
医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス
院長 松本圭史
*経歴
2005年 日本大学歯学部卒業。2005年 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 入局。
2006年 日本大学歯学部大学院 入学。2010年 同上 卒業。
2010年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 助教
2013年 日本大学歯学部歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 専修医
2016年 医療法人社団桜風会 松本デンタルオフィス 新規開院
*所属学会

日本補綴歯科学会
日本口腔インプラント学会
日本歯科審美学会
日本顎咬合学会
*スタディグループ
5-D Japan
Esthetic Explores

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